背景
今年もフランスのラバルバーチャルで IVRC からの招待チームのサポートをすることになりました。2年目です。毎年、サポートチャンネルが変わっていて以前の知識が共有されないみたいです。どうしてそういう仕組みになっているんだろう? とりあえず、去年の私の Discord 上での書き込みをこっちで公開して、これ以降の IVRC チームに活用してもらおうと思います。
ここに書かれている内容は、IVRC で議論して公式に認めたものではなく、2004 年からラバルバーチャルに入り浸っている大学教員が蓄積してきた「思い」と「経験」です。
私の願い
これは、実行委員というよりは、皆さんの訪仏が実り多いものになるよう祈っている講釈好きのおっさんとして:
- 看板を大切に。
- 人は手段ではない。目的である。
皆さんは、「IVRC からの招待チーム」「日本人」「Laval Virtual の展示者」などの多くの看板を自動的に背負っています。看板を大切にしましょう。Laval Virtual との関係では、招待チームが「ゲスト」、LV が「ホスト」ですが、お金を払って LV に来場するお客様から見ると、我々展示者もふくめて「LV 主催者側」つまり「ホスト」です。日本の誇る「おもてなし」を最大限に発揮しましょう。
来場者は、われわれの展示の偉業を示す「訪問人数の1」ではありません。語学の練習台として来ているわけでもありません。一人ひとりに「展示を理解してもらう」「楽しんでもらう」ことを「目的」として、そのためにできることを最大限やりましょう。うちの学生にも常々「伝えたいものがあれば、語学はできるようになる」と話しています。
この点で、去年のチーム、本当に素晴らしかった! その精神を受け継いでいる皆さんのことは、全く心配していません。もしかしたらまわりからいろいろ言われるかもしれませんが、自分たちが築こうとしている文化・伝統に自信を持って展示を成功させてください。
では、ラバルで!
新鮮な感動を大切に(あと、経験者は次の人をサポートしよう!)
人間、慣れてくると、新鮮な驚きや戸惑いを持っていた頃の自分を忘れてしまうのです。だから、サポート役のなかには「現地に入り浸っている人間」以外に、「最近の参加者」もいるといいと思うんですよねえ。(ちら)
サポートチームは、必ずしも現地にいなければいけないわけではありません。むしろ出発前の準備などでは、一番最近の経験が物を言う場面が多いと思います。
学生同士で交流しよう!
そうそう、せっかく IVRC のときに連絡先を交換しているのだから、生活面については、現地の学生さんに色々聞いてみるといいと思います。私は、Laval Virtual の魅力は人と人とのつながりだと思っています。学生を相互招待しているのも、将来のVRを担う若者同士が顔見知りになっていてほしいという願いが込められているのだろうと思います。現地の生活について、ここで講釈好きなおっさんに聞いているよりずっと有益な情報が手に入ると思いますよ。(比較的安いレストランとか、学生割引が効くお店とか……) とはいえ、現地の人間だと気づかない「生水注意!」といった情報もあるので、うまく使い分けてください!
大怪我と冒険
裏では「どこまで冒険させようか?」というような話が行われています。多摩大学では、「Laval Virtual に参加して得られるはずだった体験を台無しにする事態」を「大怪我」、それ以外で「いろいろ自分たちで挑戦・発見する行為」を「冒険」と呼んでいます。教員の役割は、「大怪我をしないようにしながら冒険させる」ことだと思っています。関わっている先生方のあいだでも、「あまりサポートしすぎないことが大事だよね!」というのは、共通しています。
とはいえ、それぞれの人で、少しずつレベルが違っているように思います。私は、「学生の展示の体験を最大にしたい派」なので、展示前に余計な時間がかかったり機材に不具合が出たりしそうなら、あらかじめ注意して、できるだけその可能性を下げようとします。「それも冒険のうち」と考える人は、そこには手を出さずに見守るでしょう。どっちかが過保護だったり、冷たかったりするわけではありません。
さらには、フランス渡航・LV展示の体験が、全体として「いい思い出」であってほしいと思います。帰途、パスポートをすられて予定の飛行機に乗れず、追加50万円の火だるまになりながら帰ることになったら、「フランスにはもう行きたくない」と思うでしょう。私の願いは、10年後や20年後に、みなさんが若い人を連れて再び Laval Virtual に帰ってくることです。実際に、「学生時代に LV に参加していて、いまは自分の学生と一緒にやってきています」という先生が何人もいらっしゃいます。ぜひ、いろんな冒険をしてください。それをサポートするのが、私の役割です。(大怪我しそうだったら、可能な範囲で、止めます 🙂 ) では、がんばって準備してください!
基本的に私、サポートに出動する事態を避けたいんです。なにかトラブルが発生したときに「しょうがないなあ」と駆けつけて解決していく「正義の味方」をやって「おおーすげーさすがー」とか言われたいとは全く思いません。むしろ、「今回何事もなく楽しく終わって、出原さん、特に仕事がなくて楽でしたねー」と言われる存在でありたいと思います。 😉もちろん、何か起きたら可能な限り手助けはします。でも、そもそもそうならないようご協力のほど、よろしくおねがいします。 m(__)m
大怪我防止:知らない人には注意
大怪我防止情報です。まだよく人物がわからない人から提供される飲食物は、十分に警戒してください。(特に観光地)
ラバルだと、少し仲良くなるといきなり自宅に招待されることがあります。私も 2006 年に来場者から「うちで晩御飯でもどう?」と声をかけられたことがあります。招待する側からすると、こちら側は「身元がはっきりしている人」なので安心して招待しているのだと思いますが、招待される側から見ると「この人は大丈夫な人なのか?」が判別できないことが多いです。車に乗ってどこかに連れて行かれるような場所には、同行しないほうが安全です。
招待を断ること自体は失礼には当たらないので、「ホテルでお茶でも飲みながら話しましょう」などの回避策を取ったほうが良いと思います。(「あなたは信用できないからついて行きません」とかいうと、流石に失礼なので、注意!)私が 2006 年に招待をお断りした方とは、いまでも付き合いが続いています。みなさんも、この大切な機会に、何十年も続くような友人との出会いがありますように!
出展者は「身元のはっきりしている人」なので、基本的に大丈夫です。 🙂
大怪我防止:ラバルは安全!でも注意!
ひきつづいて、大怪我防止情報です。ラバルで1週間ほど過ごすと、「これがフランスの治安レベルね」と判断すると思います。全然違います。モンサンミシェルやパリなど観光客が多いところでは、プロの連中がウロウロしているので、絶対に気を抜かないでください。みなさんと同年代か、それより幼い少女たちが、生活をかけて皆さんの金品を狙ってきます。服のポケットや背負いカバンの外側のポケットには、盗られて困るモノを入れてはいけません。
いざとなったら、日本語でいいので大声を出して助けを求めてください。最近は「スリ」から「強盗」に近くなっているという書き込みもありました。単独で戦おうとしないでください。命のほうが大事です。
他にラバルバーチャル参加者におきた事件として、私が知っている話では:
- ラバルで、ポケットに入れていた携帯をスられたことがありました
- 空港で手続き中に、足元に置いておいた機材が消えたそうです(伝聞)。
常に荷物を体に接触させ、目を離さないように注意してください。背負い紐やスマホのストラップに、手足を必ず通しておくと良いでしょう。「荷物で席取り」などは、論外です。
観光地に行く話は、ほとんど経験がないのでお役に立てません。ごめんなさい。
スーツケースは「こっそり持っていく」ことができないので、体に結んでおかなくて大丈夫です。 🙂 スーツケースについては「必ず誰かが視界の中に捉えている」ようにすれば大丈夫です。スマホとかに集中すると、ちょっと危険です。
「スーツケース」で一つお願い。皆さん、TGV の同じ車両に席を取っていると思います。TGV の荷物置き場は大変狭いので、おそらく収まりません。通路や出入り口に放置するしかない状況になると思います。(そういうものだと諦めてください) 乗り降りの邪魔にならないよう・また盗難の防止のために、途中駅に停車する前に誰か荷物番に行ってください。よろしく!
大怪我防止:アレルギー
大怪我防止用のチェック項目です。メンバー間で、アレルギーの情報をお互いに共有しておいてください。多摩大の学生なら網羅的なアレルギー検査をさせて「自分が気づいていないアレルギー」がないか確認するところですが、お金のかかる話なので、各自の判断に任せます。(その分、いざというときにサポートは行いますが、責任は取れません)
これだけいうのは、2006 年に大事故になりかけた経験があるからです。このときの多摩大生が、自分でも気づいていないアレルギーを持っていて、ラバルで夕食をとったときに発症しました。当時、それがアレルギー反応であることに気づきませんでした。翌朝になって学生から詳しく話を聞いて、ようやくアレルギーであったとわかりました。このときは、本人が「なにかおかしい」と思って、途中で食事を中断してくれたので助かりましたが、そのまま食事をしていたら大変なことになっていたでしょう。その後、多摩大学では、海外展示の参加学生にアレルギー検査を義務付けています。いろいろ言うのには、理由があるのです。
特に海外では、同じ食材でも、日本とは全く見た目が異なった調理法で出てくることがあります。注意してください。特に重篤なアレルギーを発症する可能性のある食べ物がある人は、
- エピペンの処方を依頼するなど、緊急時に対応できるよう準備して、周りにも対応方法を共有しておいてください。
- 食事中になにか体調がおかしいと感じたら、ためらわずに食事を中断し、周囲に情報を共有してください。
- «J’ai des allergies et je ne peux pas manger なになに et これこれ.» と印刷したカードを用意しておき、注文時に確認してください。口頭では正確に伝わらないと思います。
安全で楽しく過ごせますように!
文化摩擦の回避もろもろ
「文化摩擦回避情報」をいろいろ書いていました。知っておけば避けられる無用な文化的摩擦の防止情報です。(大怪我にはならないけど、知っておいてほしい情報です)
- 電車の予約席に、他の人が座っていることがよくあります。そういう文化です。「切符はあるんだからどこに座ってもいいじゃないか」という感じみたいです。「そこが私の席です」という意志を示すと、動いてくれます。腹を立てないように。 🙂
- タクシーは、走行メータの他に「大型荷物料金」が必要です。「メータより高額な料金を請求された!フランスのタクシーはぼったくりだ!」と騒いでいる人をときおり見かけますが、そういうルールです。とはいえ、本物の(!)ボッタクリもいるので、そこはご注意を。タクシー乗り場で乗れば、基本的には大丈夫なはずです。
- 握手について。フランスでは、「握手を目下から求めることはマナー違反」なので、ご注意を。 😉
- フランスでは、「公の場で酔っ払う」のは、まともな大人のすることではありません。また、お酒を断っても失礼には当たりません。「俺の酒が飲めないのか!」というのはありません。私は、飲むとその場で寝る人間なので、フランスではアルコールに手を出していませんが、ちゃんと人間関係が築けています。酒を飲んで正体をなくしたりハメを外したりしないよう、自分の酒量を把握しておいて、その範囲内で楽しんでください。自分の酒量がわからない人は、いきなりフランスでそれを確認しないように!(アルコールは避けてください)
- ホテルのビュッフェ形式の朝食でサンドイッチを作って持ち出して、昼食にしてはいけません。衛生管理上も、ルール的にも論外です。コロナ明けから、ホテルの朝食会場に「食品を持ち出してはいけない」とわざわざ書かれるようになったなあと思いましたが、そういう輩が湧いているようですね。
生活面いろいろ(ほぼそのまま転記)
旅程を最終チェックしていて気づいたのですが、今日からフランスは夏時間です。いただいた旅程表には UTC+1 と書かれていましたが、UTC+2 になっているので、時計合わせを注意してください!
TGV が止まるような駅なら、ほぼ間違いなく駅の売店 relay があります。軽食・水分・雑誌から、パリのメトロのチケットや充電器、簡単なお土産までひととおりそろいますよー
秘書から伝言です。うちでは学生の生活面全般を担当しています。(IVRC でお目にかかりました)
- エコバッグがあるといいです。おおきなスーパーなら、レジの近くで販売しています。
- とはいえ、売っているのは巨大なので、ケーキ屋さんなど小物を買うとき用の小さなエコバッグを持ち込んでおくと吉
- カップ麺を買っても、箸はつけてくれません。使い捨てフォークナイフは買えますが、箸は持ち込んだほうが吉
- 日本のビジネスホテルと違い、歯ブラシ・歯磨き粉・ひげそりなどはありません。持ち込んでください
- 挨拶は大事。「フランス人の態度が悪い」という人がいますが、「ボンジュール」の声掛けなしに要件を話したりしているのではないかと思います。ラバルでは特に重要! 超重要です!
チップは、フランスでは、基本的に不要です。「お礼の気持ちの表明」です。
レストランについては、いまは、ほとんどの場合チップは必要ありません。私は、「特に対応が嬉しかった!」「写真を撮ってもらった!」「注文にやたらと手間取った!」などのときに、2ユーロくらいをカードの支払いのタイミングで一緒に渡しています。すごく気持ちよく過ごせたときにはそれ以上出すこともありますが、学生のみなさんがそんなにする必要はないと思います。レシートに Service Compris = サービス料込みと表示されているはずです。
ホテルのフロントのかたも、通常業務以外でなにか大変なことをしてもらったらチップを考えても良いと思いますが、まず、不要です。それよりも、大きな声で Merci! と言いましょう。
ベッドメイクの方々には、私は毎日1ユーロ置いておくようにしています。なかなか直接お礼が言えないので、その代わりです。これも、学生さんだと不要です。もしもぜひチップを置きたい!という人は、あとで問題にならないよう «C’est pour vous, merci. サイン» など、チップであることを明示するようにしてください。「原則、お客さんの荷物に触れてはいけない」というルールがあると聞いたことがあります。ベッドメイクの邪魔にならないよう、ベッドの上や周辺に荷物を置かないよう協力しましょう。
私は、チップ用(兼、カードが使えない有料トイレ用)の小銭だけを入れた小銭入れをポケットに入れています。なお、「ポケットに入れる」ということは、「これはスられてもあきらめる」という覚悟の表明だと考えてください。 🙂
いろいろな通知がよく分からなかったら遠慮なく質問してください。このあたりは、「冒険」扱いなので、先回りしてなにかしないようにしています。 🙂
ちょっと解説です(講釈好きのおっさんだ……)。このイベントに限らず、このあと社会人になったあとも、さまざまな招待を受けることがあると思います。このときの鉄則は「招待者を勝手に増やしてはいけない」です。招待する側が、招待者の範囲を決めて通知しています。勝手に範囲を広げるのは、大変に失礼なことです。(これについては、若かりし頃の自分の大失態があるので、あまり胸を張って言えないんだけど)
火曜夜の Networking Dinner
参加するメリット:
- 大会中だと忙しくてあまりゆっくり話ができない人と、じっくり話ができる。
- 自分のブースの宣伝ができる(というか宣伝推奨)。より多くの人に興味を持ってもらえる。
- 普通だと繋がれない人と、名前で呼び合える仲になれる(かも)。
- 船でマイエンヌ川を行ったり来たりする体験ができる。
デメリット:
- 自腹だと、かなり高額。
- 英語ができないと、ただの置物になりがち。がんばれ。
- かなり疲れる(声を張らないと会話ができない程度ににぎやか)。
- 途中から席替えでチームメンバーが半々でバラける。
- 帰りの足の確保が大変
- 日本人同士で固まってご飯を食べて帰ってくるだけなら、同じ金額をかければ、もっとゆったり過ごせる選択肢があります。「ネットワーキング」ディナーの名称は伊達ではありません。 🙂
その他便利情報
Laval Virtual アプリのインストールを済ませておきましょう。これは、LV いろいろお助けツールですが、その中の最強機能が「来場者・出店者のバッジの QR コードを読み込むだけで、相互に、アカウントが時刻とともに記録される機能」です。バッジ登録の段階で、すでにアカウント登録されているはずです。大変多くの来場者を迎えることになるため、このバッジスキャンと写真撮影を突き合わせると、あとで誰が誰だったか大変わかりやすくなります。終了後、CSV ダウンロードもできます。これが導入されてから、名刺を使う枚数がぐっと減りました。まだだったら、入れておいて!
今年のチームには直接関係しませんが、来年以降にむけての情報集積・メモ書きとして:EU の電子的入出国管理システム EES が 2025/10 から徐々に導入されるそうです。記事によると、これについて旅行者側からは特になにかする必要はないようです。日本人だと、ビザなしの場合「180 日の間に 90 日間の滞在」が認められるので、一回 EU 外に出て再入国しても、累積で 90 日制限を超えた時点でシステム的に検出され、overstay が記録されます。ご注意を。来年以降は「最近長期間 EU に滞在していないですね?」という確認事項が必要になります。2025 年導入予定とされていた事前申請システム ETIAS は、 「EES 導入後6ヶ月で開始」と書かれているため、2026 年以降の導入になるようです。これについては、詳細が分かったらまた書きます。https://travel-europe.europa.eu/revised-timeline-ees-and-etias-2025-03-07_en